短期間にメガ大家になる
先日、所用があり、外出した。用が済んだ後、少々、時間があったので、書店に寄ってみた。コロナ禍になって以来、書店に行っていなかったのだが、最近の東京都の感染者数の激減ぶりから、寄ってみる気になった。かれこれ約2年ぶりとなる。
書店に寄ると、まず、向かうのが資産運用関係のコーナーである。たいてい、株式投資コーナーと不動産投資コーナーは分かれて存在しているが、私が不動産投資を始めた2005年頃は、大きな書店でも不動産投資のコーナーなどなく、住宅関連でマイホームものとひとくくりにされていたりした。
そのころから比べると、不動産投資もずいぶんとメジャーになって来たなと感じる。
参考になりそうな本は無いかと探すのだが、私より後に不動産投資を始めて、短期間に数億円の資産を築いた人の本などは、どんな優秀な人なのだろうと、とりあえず、立ち読みでざっとチェックする。
しかし、その中でたまに見かけるのが、表面利回り8%前後の一棟ものを買いまくって。短期間に数億円の資産を達成しているというものである。
通販大家さんの話~一棟もの検討最終回~ でも書いたが、低利回り&フルローンの投資法は、いまだに、どのように儲けているのか、よく分からない。
もちろん、本の中には細かいノウハウが書いてあったりするのだが、本当にまじめに収支計算しています?と疑問を抱かざるを得ない。
一体、何が本当なのか
以前にも書いたが、私が愛読する伊藤邦生氏の年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ちという本の中にあるのだが、表面利回り10%の一棟ものをフルローンで購入すると、物件価格が一億円なら手残りが年5万円という内容がある。
フルローンなので物件価格全額は融資で、物件価格以外の諸費用は自己資金という設定での計算である。
これでは、自己資金を投入した諸費用分の回収はいつになるのかという状態である。
また、別の愛読書である金森重樹氏の1年で10億つくる!不動産投資の破壊的成功法という本のあとがきには、ネットで8%くらい回る物件のフルローン投資は、税金払ったら手残りは「よくて」1.5%とのこと。
グロスでなくネットであるので、8%は表面利回りではなく、実質利回りでということになる。しかも、わざわざ「よくて」と書いているので、ベストケースで手残り1.5%ということだろう。
これら2冊が本当のことを言っているのなら、表面利回り8%では、手残りが残らないことになる。
そのため、表面利回り8%くらいの物件を数億円分購入して、破綻しないという理屈がよく分からないという疑問にぶち当たることになる。
物件のキャッシュフローは年々減少していく
不動産投資は物件を購入した直後が、一番、キャッシュフローが出る状態で、その後は、徐々に下がっていく。
仮に、満室続き、退去無し、故障無しでも、ローン返済の元本割合が増えて行けば、所得税が増加し、減価償却が切れたタイミングでも所得税が増加する。
数千万円の家賃収入なら、たとえ法人化したとしても、税金も大変な額になってしまう。また、法人を維持するにも費用が掛かることになる。
不動産投資市場に投入した自己資金について やついに自己資金を回収する で書いたように、私は物件毎収支表を15年以上まとめているが、空室期間の家賃ロス、原状回復費、突発的な修理代、賃貸募集の仲介手数料、家賃の下落などで、収支は年々、徐々に悪化しているのを実際に目の当たりにしている。
最初から表面利回り8%である場合、無理に35年ローンを借りて、出だしのキャッシュフローを辛うじてプラスにしても、上記の要因で、すぐにマイナスに転落してしまうだろう。
持ちこたえられなくなったら売却するのか
キャッシュフローがマイナスになり、手出ししても持ちこたえられなくなったタイミングで売却するかといっても、一棟ものの性質上、実需で買う人は誰もいないので、投資家相手に売却することになり、どうしても利回りを見られてしまう。
実需向けの売却であれば、物件購入の失敗と逆転を生む売却 で書いたような大幅なキャピタルゲインも狙える。
しかし、投資家相手に、表面利回り8%で買ったものを、表面利回り7%、6%で売ることは、困難であることは想像に難くない。
所有期間の分、物件が古くなるので、購入時より高い利回りでの売却、つまり購入時より安い価格での売却が求められるだろう。
また、35年ローンでは、仮に金利2%とすると、5年後の残債は89.6%、10年後の残債は78.2%とあまり減っていない。
さらに売却には3%+6万円+消費税の仲介手数料も掛かる。仮に購入時と同じ表面利回り8%で売却できたとしても、それまでのマイナスのキャッシュフローを補填できるのかということになる。
そんなことをつらつらと考えていると表面利回り8%の一棟ものフルローンで儲かる理由が分からない。本当はヤバいんじゃないのと思ってしまう。もし本当に儲かるのなら、誰か頭がいい人に解説してほしいくらいである。
年収1000万円の貧乏人 年収300万円のお金持ちで書かれていたが、投資で失敗した人は、決して表には出てこないという。確かに一棟ものを買いまくって、最初は調子良かったですが、最後は自己破産しましたという人のブログは見たことが無い。
そのため、失敗した人は実際には存在しないのか、失敗した人は存在するが表に出ないだけなのか、謎のままである。
コメント